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和歌山県太地町のイルカ漁を糾弾した米ドキュメンタリー映画「ザコーブ(入り江)」が、東京国際映画祭で21日に上映されるのをめぐり、同町や地元漁協が中止を申し入れていることがわかった。町側は映画は隠し撮りしただけでなく、内容に事実誤認があるとして、上映は名誉棄損にあたると指摘。しかし、主催者側は「表現の自由」だと予定通りに上映する姿勢で、町側は法的措置も検討する。
 太地町と地元の町漁協の代理人によると、映画に登場した漁協の組合員は当時撮影を拒んでおり、上映は肖像権の侵害にあたると主張。さらに、映画の内容には「漁協は害獣駆除のために漁を行う」「水銀汚染を隠すためにイルカの肉を鯨肉として販売している」などと事実ではない部分があり、漁協の名誉を棄損しているとしている。今月上旬、文書で主催者側に上映のとりやめを申し入れた。
 映画祭の実行委員会によると、「ザコーブ」は当初の上映計画にはなかったが、海外で多くの賞を取り話題になったことなどから、追加で上映を決定。上映で生じた論争は、製作者側が責任を持って対応すると文書で確認しているという。地元の申し入れに対し、主催母体である日本映像国際振興協会は「映画祭では製作者の表現の自由を尊重した運営を行う必要があり、問題点については製作者との間で解決をはかってほしい」と回答している。
 一方、町と漁協は「上映作品の選択権は映画祭の主催者側にあり、製作者だけでなく、映画祭にも同様の責任がある。漁協らの信用を失墜させるもので、表現の自由からも逸脱している」と反発している。予定通りに上映された場合、映画祭の主催者や製作者を相手取って、損害賠償などを求める民事訴訟を検討している。(湯地正裕)
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