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いい年をした中年男同士が酒浸りで過ごすクリスマスなんて願い下げ。そう思っていたが、幕が下りるころには、散々好き勝手をやらかす彼らに魅了されていた。
 アイルランドの人気劇作家コナーマクファーソンの巧みな語り口。5人の実力派男優による丁々発止の演技。豊かな精神性を刻印した栗山民也の演出。三拍子そろった見ごたえのある舞台だ。
 失明した兄リチャード(吉田鋼太郎)と弟シャーキー(平田満)が暮らす海辺の田舎町の一軒家。大酒飲みの兄は親友アイヴァン(浅野和之)とクリスマスイブの朝から酒を飲み続ける。淡々と2人を世話する弟は禁酒中だ。夜には弟が嫌っているニッキー(大谷亮介)が見知らぬ紳士ロックハート(小日向文世)とやって来て、徹夜のポーカーが始まる。
 馬鹿騒ぎを通して濃密な人間関係を示す第1幕。白熱するカードゲームから謎の男ロックハートとシャーキーとの因縁が浮上する第2幕。地下の古びた居間(美術松井るみ)で、リアルなドラマがちょっと怖いファンタジーに転じていく展開が刺激的だ。
 加えて、それをごく自然に演じてみせる男優陣の腕に感心させられる。とりわけ、豪放で陽気だが寂しがりな兄をダイナミックな身体演技で造形する吉田と、寡黙で陰気だがまがまがしいまでの熱を秘めた弟を抑制して演じる平田のダメ兄弟ぶりが面白い。甲高い声と不気味な表情を駆使し、異質な色の絵筆のように舞台を疾駆する小日向も鮮やかな存在感だ。
 妖精や悪魔が跋扈(ばっこ)するケルト文化とカトリックの世界観から魂の救済を描くのがこの劇作家の持ち味。窓からさす冬の陽光と階段の宗教画を効果的に用いた栗山の演出も、遠い世界の「中年男のおとぎ話」を身近なものにしている。小田島恒志訳。(藤谷浩二)
 12月8日まで、東京渋谷のパルコ劇場。
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